Interview 01先生が理想とする矯正治療について教えてください

今の日本には、審美重視と機能重視、2種類の矯正治療があると感じています。どちらも「歯並びを整える」という目的は同じですが、方針はまったく異なります。

審美重視の矯正治療は、早く歯並びを整えることを目的としており、噛み合わせや顎の機能にはさほど目を向けてはいません。歯を移動させる場所を確保するために、比較的簡単な検査を経て永久歯を抜こうとします。簡単に見た目が整いますが、心身の不調につながるおそれがあり、積極的に推奨できる方法とは言えません。

一方、機能重視の矯正治療は、噛み合わせや顎の機能にも目を向け、歯並びから口腔全体の改善を目指します。入れ歯になるリスクなども考慮し、永久歯を安易に抜いたりはしません。見た目が整うまでに時間を要するものの、正常な口腔機能、長持ちする美しい歯並びの両方が手に入ります。

このような違いがあるため、私は後者に挙げた機能重視の矯正治療を行っています。

Interview 03先生が「永久歯を抜かない矯正治療」を重視されるのはなぜですか？

健康な永久歯を抜くと、そのぶん歳を重ねたときに入れ歯になるリスクが高まるからです。また、安易に永久歯を抜くと、噛み合わせ・顎の機能を考慮しない結果になることも少なくありません。噛み合わせや顎の歪みは、心身に悪影響を与える可能性があります。

そもそも私は、最初から「永久歯を抜かない矯正治療」を重視していたわけではありません。自身の経験と患者様の状態から、徐々に現在の考えに至りました。

実は、私自身も大学時代に無責任なアドバイスを受け、合計4本の永久歯を抜歯しているのです。その結果、歯を食いしばる癖が抜けず、今でも苦労しています。

また、新米の歯科医師として治療にあたっていたころ、歯がほとんどない患者様を多く見てきました。ご自身の歯がないゆえに、治療の選択肢もわずかしかありません。「こうなってしまう前に何かできなかったのか」と憤りを感じると同時に、永久歯の大切さを痛感しました。

安易で無責任な抜歯、それによるご自身の歯がほとんどない未来、どちらもあってはならないことだと思い、開業してから永久歯を抜かない矯正治療を始めたのです。しかし、当時はそのような手法は確立されていなかったため、文献を読み漁り、治療に必要な知識をかき集めました。その後、抜歯のない矯正治療と相性の良い「マウスピース」と出会い、努力を重ね続け、現在の治療スタイルにたどり着きました。